春うらら [昔話]
市民の為に整然と機能的に整備された駅前広場。その空間に点在するプチ花壇が四季折々の色彩を街角に漂わせる。
長女の手をとり一緒に歩く。
直前まで吸っていた煙草の乾いた香彩と入れ替わりに、甘酸っぱい花の香りがたわやかな風に乗って鼻腔の神経を優しく刺激する。
いい季節になった。
ゆったりよちよちと歩を進めていた彼女が、その時、何かの衝動にたまリかねたかの如く、私の手を振り切って俄かに走り出す。
その後ろ姿をぼんやりと眺める私。
隣接するファンシーショップのゲートから出てきた婦人が、そんな長女の姿を視線の端に捉えてにこやかに微笑む。親馬鹿と言われればそれまでだが、それぐらい当時の長女の振る舞いは愛らしかった。
婦人の視線に心の中で会釈しながら、余裕を持って長女の歩む方角を追いかける。
その瞬間、それまで優しい感情を漂わせていた婦人の目が、ふいに見開き、息を飲む音が聞こえた。しみじみとした情緒を委ねていた手綱(たづな)が突然第三者によって断ち切られたかの如く。
計測不能な胸騒ぎに従って長女の後姿に視線を戻し、更にその先を追う。果たして、そこに待ち構えていたのは、
愛らしいプチ花壇の手前にこんもりと生い茂る酔っ払いの嘔吐物。慌(あわ)てふためき我が子を追っかける親父(私)。
#はるか大昔のプチ大事件。
長女の手をとり一緒に歩く。
直前まで吸っていた煙草の乾いた香彩と入れ替わりに、甘酸っぱい花の香りがたわやかな風に乗って鼻腔の神経を優しく刺激する。
いい季節になった。
ゆったりよちよちと歩を進めていた彼女が、その時、何かの衝動にたまリかねたかの如く、私の手を振り切って俄かに走り出す。
その後ろ姿をぼんやりと眺める私。
隣接するファンシーショップのゲートから出てきた婦人が、そんな長女の姿を視線の端に捉えてにこやかに微笑む。親馬鹿と言われればそれまでだが、それぐらい当時の長女の振る舞いは愛らしかった。
婦人の視線に心の中で会釈しながら、余裕を持って長女の歩む方角を追いかける。
その瞬間、それまで優しい感情を漂わせていた婦人の目が、ふいに見開き、息を飲む音が聞こえた。しみじみとした情緒を委ねていた手綱(たづな)が突然第三者によって断ち切られたかの如く。
計測不能な胸騒ぎに従って長女の後姿に視線を戻し、更にその先を追う。果たして、そこに待ち構えていたのは、
愛らしいプチ花壇の手前にこんもりと生い茂る酔っ払いの嘔吐物。慌(あわ)てふためき我が子を追っかける親父(私)。
#はるか大昔のプチ大事件。
2009-12-03 01:11
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コメント(7)
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お嬢さんとの過ぎ去りし一こま、ホント微笑ましいです。
ですが、「酔っ払いの嘔吐物」まで記された理由が知りたい今日この頃[嬉しい顔]
by 抹茶 (2009-12-03 01:44)
シュールなオチですね[飛び散る汗]
by 桔梗♪ (2009-12-03 02:28)
あー[ふらふら]
by しんたろう@@ (2009-12-03 05:25)
素晴らしい文章能力ですね。オチも含めて[嬉しい顔][複数のハート]
by ヒサ (2009-12-03 23:21)
>抹茶さん
=====
「酔っ払いの嘔吐物」まで記された理由が
=====
それが無ければ、記憶に残らなかった風景かも知れません。[温泉]
>桔梗♪さん
=====
シュールなオチで
=====
御意。いかにも。恐れながら。[飛び散る汗]
>しんたろう@@さん
=====
あー[ふらふら]
=====
がぁ゛ーーーーー[爆弾]
>ヒサさん
=====
オチも含めて[嬉しい顔][複数のハート]
=====
オチでもネタでもない史実です。[嬉しい顔]
>jayさん、本ホネ(アビブ)さん、ひもなしさん、YASUさん、25☆さん、decoboさん
皆さんいつもマーキン[ハート]グ、あざーーーす。
by よたろう (2009-12-04 23:00)
続きが気になるところです
by ひね (2009-12-04 23:28)
>ひねさん
=====
続きが気になる
=====
記憶は下呂温泉で途切れてます。[温泉]
>donさん
マ[ハート]ーキング、有難うございます。
by よたろう (2009-12-06 23:36)